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最初の低音、コウジさんほど甘い声は出ない。
突き刺すような、掠れるような、あの攻撃的な歌い方はできない。
どれだけ憧れても届かない声質。
俺は俺。
俺にしか出せない声、音色、感情、それを信じようと決めるまで、コウジさんは高い壁だった。
今だって、高い壁ではあるんだけど。
俺の歌い方で、コウジさんの曲を歌う。
……こんな曲を、アレンジを、歌詞を、生み出す人はもういない。
「……っ」
叫べないよ、コウジさん。
あなたの歌は、あなたのものだ。
1曲歌い終ると、俺は他のアーティストを選び、適当に何曲か予約した。
歌っていると、気が紛れてくる。
何曲目だろうか、ふいにドアが開いた。
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