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「お邪魔します」
俺はキサラに招かれるままに、なかに入った。
キサラは狭い廊下を抜けて、一番奥の部屋のドアを叩いた。
「小田切さん、入りますよ」
「どうぞ」
キサラはこげ茶色のドアを押した。俺もキサラのあとに続いて部屋のなかに入った。
灰色のカーペットの上にはL字型の赤いソファ。そこには、グレーのパーカーにデニムを穿いた少年が座っている。
少年は俺を見ると、軽く会釈をしてきた。
「こんばんは、高木春紅(たかぎ はるく)君……だね?」
はっとして左手側を見ると、白い壁に面したキッチンの前に長身の男性が立っていた。
短い黒髪に、一重まぶたのスッとした目。鼻筋も通っていて、清潔感溢れるサラリーマンふうの男だ。30代前半くらいか。
服装はスーツではなく、青いチェックのボタンシャツに、インナーは白いTシャツ、それにデニムといったラフなものだけど。
「初めまして、小田切基道(おだぎり もとみち)です」
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