音色

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後日。 オーナーにいろいろ世話になったあいさつをするために結愛を連れて開店前の店にやってきた。 「葵は結愛ちゃんにベタボレだな。他人にはこれっぽちも興味ありませんって無関心なくせに、結愛ちゃんのことになると途端に人間臭くなる。 さっきのあいつの拗ねた顔なんかは今までみたことないよ」 「?」 店のみんなにと心ばかりのケーキの箱を差し出した結愛に向かってオーナーがさも面白いものを見たというようにソファーに肩肘をつきながら笑った。 余計なことをオーナーが結愛に言い出しそうで釘を刺す。 「オーナー余計なこと言うな」 「ふん、葵が怒っても怖くないね。拾ってやってここまで面倒みたのは俺だし」 「ちっ」 オーナーが横目で一瞥し俺は舌打ちをした。 結愛が俺の口の悪さを心配してキュッと袖口を掴んできた。
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