音色

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小さく消え入りそうな声音に俺も悪態をつくのはやめた。 「しっかし、結愛ちゃんの力は偉大だね。店に顔を出しだけでみんなが彼女の柔らかさに惹かれて、普段しない表情してる」 「…ホントはここには連れてきたくはなかったけどな」 ボソッと呟いた。 くい、とまた服の裾を結愛が引っ張った。 頬を膨らませる結愛に、わかってると、小さく笑い返す。 「葵はすごいわがままだよな。独占欲強い男って結愛ちゃんも嫌だと思わない?」 結愛はくすくす笑った。 「だけど、ホントに結愛ちゃんの影響を葵はモロに受けて変わったよ。 以前は自分のことも他人のことにも無関心で、まるで死に急いでるみたいで見ててハラハラした。 今は…結愛ちゃんのそばにいるからかな。少なくともトラブルを引き寄せることはなくなったね」 「どんだけトラブルを引き寄せてたって言い方…ま、そっか」 頭をかく。
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