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倒れた白髪を支えながら、この状況をどうすればいいのか考えていたが…何も思い浮かばなかった。
今のところ、結界内に入っているのはサリエルだけ。
たった1人の侵入者に向けて、国民を守るようにして立つ他の奴らも、敵意を剥き出しにしている。
「懐かしいなぁ…ちゃんと王様になれたんだ?…その姿、ちょっと笑える」
「お前の笑った顔なんぞ見たことないわ」
ピリピリとした視線が2人の間で飛び交う中、口を開いたのは水帝。
「王を疑う気はありませんが、この悪魔とは何処でお知り合いに?」
サリエルを睨み付けたまま、そう言った水帝に…王はそうだな、と小さく呟き、語った。
王がまだ15歳だった時の話を。
「私の古い友人に、アビーという魔法学者が居たのだ。優秀な、とても探究心の強い友人が…」
そんな名前だったね、なんて懐かしむ様に喋ったサリエルは、この話が終わるのをおとなしく待ってくれるらしい。
アビーは、両親がとても優秀な学者だった。
親と共に遺跡や研究室に足を踏み入れる事もあったアビーは、次第に興味を持っていった。
魔法が、どういう原理で生まれたのか…その研究を中心に行っていたアビーは、ある点に疑問を持った。
魔法は神が生み出したもの。
じゃあ、神はまだまだ人間の使えないたくさんの魔法を知っているんじゃないのか?
それを知れれば、もっと世界は繁栄するのではないか?
更に、天使は1人1人独自の能力を持っている。魔法によく似た、魔法ではない能力を。
何故天使にはあって、人間には無いのか。
人間にも、そういった能力は無いのだろうか?
まだまだ知らない事がある、もっと知りたい。魔法の原理を、魔法の種類を…もっと、もっと、もっと。
その探究心が、自身を破滅へ導くとは…誰も思わなかった。
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