神聖祭2日目。

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アビーが次に目を付けたのは、禁忌魔法だった。 禁忌魔法の研究者も、数多く居たが…アビーはこの魔法でさえも使いこなそうとした。 禁忌魔法が禁忌と言われる所以は、その対価にある。 人の命を奪うもの、自身の何かを奪うもの、それは人間として外れている行為だと思われたからだ。 この魔法を人間へ伝えたのは、言うまでもなく堕天使である。 人間界に平穏が訪れたその後…堕天使は地獄へと人間を引きずり込む悪魔になった。 人間を惑わすものだと。 人間には必ず闇がある。そこに漬け込み、悪事を働くのが悪魔だった。 その悪魔が使う魔法が、禁忌魔法。 魔王と戦ったあの時、多くの同族を奪った魔法。 それを使おうとするアビーを、パーシーは当然止めた。 だが、止められなかった。 アビーが、パーシーの前から姿を消したのだ。 パーシーの耳に入ったのは、数多くの禁忌魔法を使い、たくさんの人間を殺したアビーの情報。 アビーの栄光は一瞬で消え去り…代わりに犯罪者として名が知れ渡った。 禁忌魔法によって、視力を失い、聴力を失い、声を失い、表情を失った。 それでも、アビーの知りたいことは何1つ知れなかった。 逃げ惑いながら、他人と自身を犠牲にしても、何も…知れなかった。 まだ知らぬ魔法の種類、人間にも使える能力があるのかを。 パーシーはアビーを探した。たとえ罪人であったとしても、友を想うその心から。 禁忌魔法で命を落とすその前に、一言でもいいから言葉を交わしたいという願いから。 だが、やっとの事で探し当てた彼を見つけた時には…もう遅かった。 彼は、最大の禁忌魔法を使っていたのだ。 多くの同族を殺した、悪魔を呼び出す魔法を。
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