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『アビー!』
聴力を失ったアビーには、その声は届かなかった。
『アビー!なんてことをしたんだ!この魔法は…最後は命を落とす魔法だと知っていただろう!?』
肩を掴んでアビーに怒鳴ったパーシーは、彼の変わり果てた姿を見てギョッとした。
頬は痩せこけ、生気が感じられない。
禁忌魔法を重ねると、こうなってしまうのか…と、重く感じた。
『この魔力は…パーシーかい?やっと知れるよ。何でこの方法に気付かなかったんだろうね』
声を失ったアビーのその声は、念話によるものだった。
そしてパーシーは、大事な物を失ったアビーを知る。
『アビー。耳も…目も…声も…失くしてしまったのか…?』
恐る恐る念話で話しかけると、もう体力も無いのか…弱々しくコクリと頷いた。
『こんなに嬉しいはずなのに、表情に出ないんだよ。不思議な感じだ』
よく笑っていたアビー。その面影は無くなっていた。
『パーシー見てよ。これが悪魔だよ…知れるなら、この命を捧げたっていいんだ…』
『ダメだ…ダメだアビー。君を…唯一の親友を失いたくないんだ…』
そっと涙を流すパーシーは、アビーには見えていない。
そして、気付くこともない。
目の前には、銀色の髪をして…目に包帯を巻いた悪魔が立っていた。
アビーと同じく無表情なその悪魔は、淡々と…契約について説明した。
『俺はサリエル。望みを叶える代わりに、それに見合う対価を差し出してね。君の命が亡くなるか…見合わない対価を差し出せば、契約終了。どう?分かった?』
それが、パーシーとサリエルの出会いだった。
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