神聖祭2日目。

13/29
前へ
/845ページ
次へ
『僕は知りたい。人間の知らない魔法がまだあるのかを。天使と同じく、人間にも能力があるのかを』 パーシーの願いも虚しく、アビーは悪魔に願いを伝えてしまった。 『魔法の属性、種類、能力…全てを知りたい!教えてくれ!対価ならなんでも払う!だから!』 『分かったからちょっと落ち着きなよ。そうガツガツ来られても困るんだけど』 悪魔は…サリエルはそれを引き受けた。アビーは正式に悪魔契約を果たしてしまったのだ。 アビーの手の甲に浮かんだ紋章を見て、パーシーは目眩がした。 『で、何でもって言われても無理なんだけど。対価をちゃんと示してくれない?』 そう言うサリエルに、アビーは全人類の命を捧げると答えた。 自分の命も捧げる。知れれば…知って息絶えるなら、本望だと。 『ア、ビー?何を…』 念話も忘れて…声を震わせるパーシーの顔は、絶望に満ちたものだった。 アビーが…自分の願望の為に人類を滅ぼす悪魔に見えた。 『本当に、対価はそれていいんだね?』 そう聞くサリエルに、アビーがもちろんだと答えると…今まで無表情だったサリエルの口元が緩んだ。 『初めてだよ。自分の願望の為に人類の命を捧げる、なんて面白い人間に出会うのは』 君も聞いた?なんて、パーシーに問いかけるサリエルは、さっきとは雰囲気が違う。 何かを楽しんでいる感じがする。 『早く!早く教えてくれ!僕はこの時を待ち望んでいたんだ!』 『はいはい、ご主人様…落ち着いてよ。急いでも結果は同じなんだからさ』 焦るアビーにそう返すサリエルは、左手を前に出し…掌を下へ向けた。 すると、地面全体が黒く染まっていく 『我が名はサリエル。月の秘密を知る者。全ての鍵を握る物。サリエルの名の下に…悪魔契約第12条を施行する』 凛とした声。 下を見ると、黒い地面の奥に何かが見えた。動く何かが。
/845ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13991人が本棚に入れています
本棚に追加