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サリエルは、最初から願いを叶える気などなかったのだと言った。
禁忌魔法、悪魔の魔法を使う人間が居るのは知っていた。
面白い人間だと思った。
だから、他の悪魔が召喚に呼び出されるところを、無理やり出てきたそうだ。
それなのに…その人間の願いはちっぽけなものだった。
自分と同じく、人間を玩具か何かと捉えているのではないかと期待していたのに…
ただの探究心だけで、禁忌魔法を使っていたのか…と。
しかも、差し出した対価も見合わぬものなら…地獄で自分の玩具になってもらおう。
殺しても死なない体を嬲って遊ぼうと。
そう思ったのだと、サリエルはパーシーに話した。
『本当に、君は悪魔だ。おかげで私は大事な親友を失った…』
『いいじゃん。人間もいつかは死ぬんだろ?少し早かっただけの話さ』
悪びれもせず、仕方のないことだと話すサリエル。
その言葉に怒ることもなく…パーシーは俯き…さっきまでアビーの居た場所を見つめるだけ。
『さてと。次期マナリナ国王様…きっと、俺達は再び会うこととなるだろう。その時まで、暫しのお別れだ』
じゃあね。と手を振ったサリエルは、そのまま静かに地へと沈んでいった。
アビーを失った悲しみと共に心に強く刻んだのは、目に包帯を巻いた銀髪の男…サリエル。
それから数年後。
マナリナ国王になったパーシーは、魔王復活の知らせを受けた時…
あのサリエルという悪魔が再びやって来ることを悟った。
友の仇であるサリエルを。
「本当、懐かしいよ。会いたいなら会わせてあげようか?あの時の姿のまま、彼は地獄で生きてるよ」
王の話が終わった後、最初に口を開いたのはサリエルだった。
とても陽気な声。
王は口を開くことなく、サリエルを睨みつけた。
その目は…当時の事を思い出したのか、悲しみと…微かな憎しみが織り混ざったものだった。
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