13991人が本棚に入れています
本棚に追加
ま、簡単に言うと…王は裏切っていたんじゃなくて、ただ単に友達を殺した相手を覚えてたってだけ。
「お前は何をしに来たんだ?」
「だから言ったじゃん。挨拶しに来ただけだって…」
俺の問い掛けに、やれやれ…と手を上げてワザとらしくため息を吐くサリエルは、チラリと外を見る。
残念ながら…こいつらもあの烏天狗と同じく、自分の意思で心の声を聞こえなくする何かがあるらしい。
だから、その視線の先に何があるのかも…何も分からないのだ。
「あ、来た来た。待ちくたびれちゃったよ。まったく…振り回されるこっちの身にもなってほしいよね」
そして、さっき見ていた視線の先…結界の外を見るサリエルは、片手を上げて…何か衝撃波の様なものを放った。
それも、攻撃ではなく…強い突風が吹く程度の。
「ん…あれ…」
すると、倒れていた白髪…国民達が目を覚ました。
今のはその為の衝撃波らしい。
「大丈夫か?」
「はい。すみません…」
体に何も異常が無い事を確認するが、サリエルが何をしようとしているのかがわからない以上は、手を離せない。
片腕で抱き締めたまま、警戒しながら周りを見ていた。
「おーい。もういいよー」
砂煙も、少しマシになった結界外には…十数人の人影が薄っすらと見えた。
多分、堕天使だろう。
サリエルの声に反応してか、結界がガタガタと音を立て始める。
「佐藤…!ダメだ。このままじゃ結界が壊れる!」
舞台下まで走ってきたイケメンが、焦った表情で外を指した。
外から何かの力がかかってきている、と。
「ったく…人間を1箇所に集めろ。そいつらだけを守る様に、結界を貼れ」
どうせ俺達が倒れれば消える結界だ。
このまま奴等が攻撃してくれば…防戦してるだけでは、何も出来ずに終わるだけ。
それなら、足手まといの人間は全て1箇所に纏めて保護しておけばいい。
戦うのは俺達なんだし。
最初のコメントを投稿しよう!