神聖祭2日目。

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黒。 その言葉がよく似合う堕天使。 漆黒の髪に、翼。服まで真っ黒。頭の先から、足の先まで黒で統一された男。 「気安く俺の名前を呼ぶな」 斗真、と訛りの無い発音で俺の名を呼ぶ堕天使は、ルシファーだ。 12枚の羽を持ち、全ての天使の中で最も美しく、気高い存在だったルシファー。 天界では神に反旗を翻すが、返り討ちに遭い地の底へと沈められ…今では地獄の王、魔王と呼ばれる存在。 その12枚の羽は…黒く染まっている。 「魔王が直々に何の用だ。用件によっては…俺が相手になろう」 「そんなピリピリすんなって。サリエルから聞いただろ?ただの挨拶だって」 「信用出来るわけねぇだろ」 なにしろ、こいつは腰から長剣をぶら下げている。 手を伸ばせば、簡単に攻撃する事が出来るはずだ。 「翼…お前も何とか言ってくれよ。その怒りっぽい性格直せってさ。マジで挨拶しに来ただけなんだって」 今度はイケメンの名前までもを、訛りもなく発音した。 周りの人間は、この会話に耳を傾け…静かに事を見守っているが…内心は、俺らの事を疑っている。 堕天使に頭を下げられた俺は、魔族側へと勧誘された不可解な事によって。 しかもこいつ…俺達の事を知っている様な口ぶりだ。 懐かしむように、馴れ馴れしく話し掛けて来やがる。 「佐藤…この人」 「俺も思っていたところだ」 イケメンも、勘付いたらしい。 この男の正体を。 この勘が当たっていれば…眉間に皺を寄せる俺に、必ずすることがある。 「お前は糖分が足りてねぇから怒りっぽいんだよ。ほら、飴食え飴」 そう言って、地球で売っている市販の飴を俺に放り投げて来た。 それで、俺達の考えが確信へと変わる。 「まさか…貴方が魔王だなんて」 その言葉を投げかけるイケメンに続き、俺も口を開いた。 「ここで何してんだ………兄貴」
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