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あの1000年前の話に出てくる勇者…ってことは、イケメンが異世界から来たこともバレたわけで。
不安の中に、それと同じくらいの羨望で見られている。
「勇者様、握手してください!」
「魔王討伐頑張ってください!」
これが、分かりやすい例。けっこう早い段階でバレたもんだ。
そして、魔王に立ち向かった勇者の仲間として…俺達の元にまでやってくる。
「お名前を教えていただけますか!?」
「イアンだ」
「イアン様!これから苦難があると思いますが…頑張ってくださいね!」
いろんな人がギュッと手を握って魔人に握手しているのはいいが
「気を付けろよ。そいつ魔人の長だから取って食われるぞ」
俺の言葉で、ゆっくりと手を離して苦い笑いを浮かべる。
「おい、余計なこと言うなよ。食いたい衝動を我慢してまで、笑顔で対応してたんだぞ?」
その言葉で、ゾロゾロと逃げていき…魔人の周りにだけ人だかりが無くなった。
ありがとう魔人。お前のおかげで面倒なのが一気に居なくなった。
「ばーか。もう人間なんか喰わねえっつの。人間食うなら豚喰ってた方が美味い」
そう思わねぇ?なんて同意を求めてくる魔人だが、あいにく俺に求められても人肉の味は知らん。
「お父さん、ロン毛さん。いくら嫌だからってそういう嘘吐くのはよくないですよ」
「違うんだミア。お願いだから、お父さんのことは嫌いにならないでくれ」
さっきまでのピリピリした空気が嘘の様に、いつもの和やかな雰囲気へと変わった。
神聖祭2日目はなかなか波乱なものだったが…もう全員に笑顔が浮かんでいるし
終わり良ければすべて良し、ってことにしておくか。
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