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「皆様、笑って下さい」
笑えるかよ。
王広間の隣には、大きなベランダの様なものがある。
そこから見える景色は、城にある広大な庭で…王がそこから笑顔で手を振っている。
庭に大量に居る国民へ向かって。
マナリナ国民だけじゃない。きっと他の国から来ている奴もたくさん居るだろう。
ここには勇者御一行が居るのだから。
あの話の後、今考えても話が進まない。とルシファーへ対抗する方法は後で考えることになった。
そこまでは良かったが…
王が、是非顔を見せてやってくださいと、それだけ伝えて俺達を連れてきたのがこの場所だ。
兄貴と戦ったあの日から、空はずっと曇ったまま…陽の光が差さない毎日が続いている。
邪気も溢れ、大人しかった魔物達も頻繁に人間を襲うようになった。
それでは嫌でも気付いてしまう。
魔王が復活したことを。
1000年前の話は、知らない人間が居ない程の常識らしく…この曇り空が魔王復活の証だと、誰もが分かったらしい。
そうなると、勇者の存在を求めるのが1000年前の話を知っている国民達の自然な成り行き。
王は勇者召喚が無事に済んでいることを民衆へ伝え…今に至る。
簡単に言えばお披露目だ。
「魔王復活は黙っていた事なのですが…とうとうこの時がやって来てしまいました」
国民の歓喜に満ちた声をバックに、王は俺達にしか聞こえない声で喋った。
魔王復活は人間を混乱させる情報。
それを緩和するにはこの方法しか無かったのだと、王は話した。
俺達の顔を見せて、少しでも多くの人が安心出来る様に…という考えらしい。
それは良い案なのかもしれないが…俺にとっては大迷惑だ。
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