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そして魔人は、事の経緯を話した。
人間を愛したこと。
猫女が人間側についたことで、こちら側の味方になったことを。
「俺達を軽蔑するのは構わない。それは俺達魔人が犯してきた罪によるものだからだ」
そう言った魔人は、また頭を下げた。
そして、だが…と続けた魔人は少し溜めて、再び口を開いた。
「半魔は何も出来ないし、反抗することも出来ない。それを迫害するのは、俺達がやってきた事と同じだ」
人間が弱いから、襲い、奪う。
それと同じ事をするのは如何なものかと。魔人は訴えた。
何の罪も無い、弱い存在をなぶり殺しにするケースも少なくない。
「俺の娘であるミアは、特殊な魔武器によって力を得たが…半魔の迫害をやめて欲しい」
それを見つけた時は、容赦しない…そう伝えた魔人は、マイクを降ろした。
自分の罪を棚に上げた綺麗事なのかもしれない。
でも魔人の訴えが響いたのか…国民は静かにその話を聞いていた。
そうして、全員の自己紹介が終わる。
魔人への信頼はまだまだ0に近いだろうが、これから本当に人間を襲う事がなくなれば、自然と信頼されていくだろう。
仲良く暮らす日も遠くないかもしれない。
「ありがとうございました。これで少しは国民も安心するでしょう」
「いえ!こんな事で済むならお安い御用ですよ!」
王の言葉に笑顔で答えるイケメンだが…これからの事をちゃんと考えているのか?
勇者様、勇者様と言われ…全人類の期待を背負うことの重大さを。
俺はそんな事よりも、早く兄貴をぶっ殺したくて仕方ないけど。
国民の期待云々よりも、俺は個人的な恨みがあいつにあるから。
あの日の惨劇を…もう繰り返したくはないんだ。
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