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「兄ちゃん!見てよこれ!俺が捕まえたんだぜ!」
「お!凄いな斗真!ほら、ご褒美に飴やるよ。新作の飴だ」
「また飴ー?たまには他のご褒美がいい!もう飴飽きた!」
佐藤 斗真、この時7歳。
小学校1年生だった。
今では考えられないが、手に持つ虫を片手に無邪気に笑う子供が…この俺。
2つ歳上の兄である一真の事を慕い、他の家庭の兄弟よりも仲が良かったと思う。
この性格を変える出来事が起きた1つ目の事件は、春休みに起きた。
『斗真!一真!』
バタバタと、慌てて帰って来たのは母親。
おかえりー。と母親に抱き付いた俺だったが、その手はすぐに引き離される。
『いい?これから先、ベルが鳴っても絶対に出ちゃダメ。学校も暫く休みなさい』
意味が分からなかった。
突然そんな事を言われても、うまく状況を飲み込めない俺達だったが…母親の顔を見ると頷くしかなかった。
始めて見る、母親の泣きそうな顔。
何かあったのは、幼心に察した。
その瞬間、家のベルがピンポンと鳴り響く
母親はビクリと肩を震わし、玄関を見るが…動こうとはしない。
その音に怯えるようにして、母親は俺達兄弟をリビングへと連れていく。
『佐藤さーん?居るのは分かってるんですよ!』
『少しお話を聞かせてください!』
外に誰か居るようだ。
でも母親はその言葉に答えることなく、テレビを付けた。しかも爆音で。
その声をかき消すようにしているのは、7歳の俺でも分かった。
『おかーさん…どうしたの?』
そう問いかけても、何でもないよと返されれば…子供はそれを受け入れるしかない。
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