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そして事件から数ヶ月が経った頃。
マスコミが家に押し寄せる事もなくなり、警察も来なくなった。
だが、それでも学校には行けなくて…近所の人の目が痛かった。
一緒に買い物へ行くと、いろんな人がこっちを見て話している。
お母さんは、泣きそうな顔になっていた。
『おかーさん帰ろ!俺もう帰りたい。スーパー飽きちゃった!』
小さな俺に出来るのは、そんな事くらいで…母親を守る術なんて持ち合わせていなかった。
そしてとある日。
久しぶりに、家のベルが鳴った。
マスコミが来なくなってから、長く鳴らなかったベル。
それでもトラウマがあるのか、母親はその音にビクリと肩を震わせた。
ヨタヨタと、おぼつかない足取りで玄関へと向かった母親。
俺も後ろをついて行った。
母親を虐める奴だったら、追い出してやろうと思って。
でも、来訪者はそんな奴じゃなくて。
『皐月、突然押し掛けてごめんね。葉月だよ…覚えてるかな?この子は私の息子』
『本城 翼です!』
皐月(さつき)、と俺の母親の名前を呼ぶのは葉月(はづき)という人物。
その人と一緒に手を繋いでいるのは、俺と同じくらいの年齢の男の子。
言うまでもなく、イケメンだ。
『やっぱり顔色が悪いわ…。ねぇ、家に入ってもいいかしら?消化に良いものを作るから…少しでも食べないと』
そう言って、返事を聞くことなく足を踏み入れたイケメンの母親。
『ちょっと葉月!分かってるの?この家に出入りすれば貴方だって噂になるわよ?』
『言わせておけばいいのよそんなもの!悪いのは貴方の旦那でしょ』
とても強い人だと思った。
俺は毎日を兄貴に助けられてきたけど…お母さんの事は、この人なら救えるんじゃないかって。
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