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~被告人Aへの聴取3~
……え、「救済」についてですか?
んー、難しいんですよね……いや、説明は簡単なんです。ただ、先生がそれを理解するのが、難しいと思います。
今まで刑事さんとかにも話したんですけど、お前なにふざけたこと言ってるんだ! そんな理由であんなにたくさんの人の命を奪ったのか! って怒鳴られましたし。
……それでも話していいですか?
……わかりました。
僕の言う「救済」っていうのは、まさに「この世からの救済」です。
先生は、この世の中について、この人間社会についてどう思いますか?
僕はね、この世の中は本当に理不尽なものだと思うんですよ。
この世には、いつどこにでも、人の「嫉妬」や「殺意」、そして「理由のない悪意」や「誰かを貶めて得る快感」など、様々な感情が溢れています。
そしてその感情は、誰にでも降りかかるし、誰にでも芽生えるんです。
それってなんか……悲しいと思いませんか?
どんなに純粋な人でも、誰かを下に見たりする……。
そして「自分より下の存在がいるから大丈夫」と心の中で誰もが思っている……。
先生だって、そんな感情一回は抱いたことあるはずですよ?
……否定も肯定もしませんか。絶対あると思いますよ? まぁ、認めたくない気持ちはわからなくもないですけどね。
……僕ですか? もちろん僕にだって、そういう感情はありますよ。
あ、今それで何偉そうに語ってるんだ、って思いましたよね?
仕方ないじゃないですか、僕も人間なんだし。
人間なら誰しもがそういう汚い感情を持っていますよ。
だからですね、この世は誰がどんなに頑張っても綺麗にならないんです。
これからも多くの人々が傷つけられ、あるいは相手を傷つけて行く……。
それは永遠に変わらず、終わらないんです。
そんな汚い穢れた世界をこれから生きていく人たちのことを思うと……どうにかしなきゃな、って感じたんですよ。
それで、僕は彼らを「救済」したんです。
この世からの逃げ道はただ一つ「死」だけですから。
ねえ先生、僕のしたことは正しいと思いますか?
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