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「だって麻紀、正一が好きだもん。これが一目惚れっていうものなのね」
大人ぶった口調に笑みが浮かんでしまう。
ソファから誰かが立ち上がった――大地か。
慌てながら麻紀の傍へと駆け寄るのだが……間に合わなかったな。
麻紀が正一の頬へとキスをした。
「大きくなったらお嫁さんになってあげる!」
「パパと結婚するって言ってたじゃあないかぁぁぁっ!」
大地が床へ崩れ落ちた。
騒ぎに気が付いたのか、真由子がリビングへと顔を出してきた。
床で涙にくれている大地へつかつかと近づき、後ろ頭を小気味よく叩く。
すぱんっ、という音が広がった瞬間より部屋に笑い声が巻き起こった。
隣に座っていた千昭がこそりと頭を腕にもたれ掛けさせてきて――
重たいと、眉間に皺は寄るのだが何故か、笑みは崩れなかった。
END
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