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戸惑ったようにしている千昭の両手を集め、握りしめる正一の頬は染まっていた。
「や、あの……その……」
と、ちらちらこちらを見てくる千昭。
俺が好きだと言って離れないのはお前なんだから、さっさと断ればいいだろうに。
しかしその手。勝手に握るなよこいつ――どうして俺はこんなに苛立っているのか。
表には出さぬよう、無表情を作る。
今まで逆の立場しかなかったからな。俺が迫られ、千昭がそれをうろたえながら見つめている、慣れた形でないからだろう。
「いいんじゃあねぇか。お前、どうせならばこのままマネージャーを辞めて日本にいろよ。そうすれば俺だって自由に遊べるし、な」
幸せそうな二人の邪魔を本格的にする気は無いが、少しくらいはちょっかいをかけてもいいだろう?
琢己の全身へ視線を這わせると――斑鳩がずいと、琢己を背中に隠した。
鼻で笑っちまう。
まぁ、そんな事を言いはしてもどうせ千昭の事だ。縋り付いてくるに決まっている。
ちらりと視線を投げかけてみると――何故うつむいているのか。
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