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「どうして? 何で? 昴――」
「知るか!」
唸りながらそっぽを向く。
「昴」
琢己より呼びかけられ、顔の向きはそのまま視線だけを投げると、とても真剣な表情を浮かべた顔がそこにはあった。
「よく考えて。いつでもチャンスがあるわけじゃあないんです。いつまでも隣にいてくれることが当たり前ではないんですよ」
――胸に突き刺さる言葉だ。それを、誰からでもない……琢己より言われてしまうと……
顔をくしゃっと顰めてしまった。
肩を叩かれ、しぶしぶ千昭へと顔を向ける。
自嘲めいた笑みだ。
「大丈夫だよ、昴。僕は誤解なんかしやしない。ずっとその背中を追いかけてきたけれど……決して振り向いてくれることは無かったものね」
そして、ゆっくりと目蓋を伏せてゆく。
「安心をして。もう……諦めるよ。こうして早瀬君も前に進めたことだし、僕も……」
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