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正一がまた、千昭の背中へ手を伸ばそうとしている。
何も考えぬまま、その手を掴んで横へ放った。
ああ、糞。畜生。
ずっと隣にいたんだ。以前は確かに鬱陶しいと感じていたのだが、今となってはそれが変わるのだと考えたことはない。
この感情が何なのかはわからんが――
「……お前がいなけりゃあ俺のマネージメントは誰がやるんだ」
「後任を探しておくから」
目蓋を伏せたまま言われた。おい、察しろよ……って、無理な話か。
ずっと拒否をしてきたんだ。こいつの目の前で女を抱いたこともある。
軽く息を吸い、一瞬肺にそれを留めた。
両手で頬を包み込み、視線を無理やり合わせる。
「お前以外に俺が止められると思っているのか。勝手に好きになっておいて、勝手に纏わりついてきて、挙句の果てに諦める、だと? 阿呆か。それだけ粘ったのだったらば――一生、アプローチをしてこい。そうしたならばいつか、どうにかなるかもしれんだろうが」
糞、どうしてか頬が熱い。
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