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唯のときには、連れ立ってラブホ街に消えていくところだった。
決定打といえば決定打だが、あれには言い訳の余地があったと思う。
──けど、こりゃないぜ。
俺の人生唯一の女神だと思った芽衣は、暗がりの壁に押し付けられ、誰か判らない男に抱きすくめられていた。
焦って来るんじゃなかった。
この前みたいに、大人しく待てばよかった。
後悔先に立たず。後の祭り。
他に、なんかあったっけ。
なんというか、俺は道から路地を覗いたところで。
芽衣達はこっちに気付いてないから、このまま引き返すという選択肢が俺にはある。
唯のときも、結局そうした。
その場で呼び止めることもできたが、俺はそれをしなかった。
これまでずっと、そうしてきた。
面倒なことをすべて回避してきた。
回避できなかったのは、操が奉仕している場面を見てしまった、大学時代のアレだけだ。
一瞬、考えた。
このまま、この場から消えるか、否か。
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