つついた藪から出るのは棒か、蛇か。

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   俺の方を選んだ芽衣の背を見つめる男の目には、何の感情も映っていないような気がした。  年齢は、俺と同じか、少し上くらいに思えた。  腕の中で震える芽衣を見下ろしながら、この状況をどうしたものか、と考える。  場合によっては、陳腐だが殴り合いにでもなるかも知れない、と覚悟をしてから声をかけた。  女を挟んだ男と男が、まともな話などできるはずがない。  それが準備された状況でないのなら、特に。  だが、男はそういった状況にありがちな反応を見せない。  人目につかない場所で芽衣を抱きすくめるだけの執着があるはずなのに、それを今ここで見せようとはしない。 .
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