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芽衣は、男を振り返らないまま俺の腕の中で俯いた。
「……き、切るとか……まるで付き合ってたみたいな言い方、やめて」
「ふ」
芽衣の反応に、男は苦笑する。
「まあ、どっちでもいいけどさ。男ができたからって、それまでの人間関係反故にするとか、お前、ちょっと冷たすぎるんじゃねえの?」
「だから……っ、これまでがおかしかったんだって、そう言ってるじゃない!」
芽衣は顔を上げ、振り返って男を睨み付けた。
その反抗の仕方がメス猫の威嚇みたいで、なんか悲しくなる。
「おかしいって、なにが」
男は何の感情も映さない目で、芽衣を見ていた。
とりあえずこのふたりの話だから、俺はここで見ているしかない。
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