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この場で芽衣を連れて帰るのは簡単だが、わざわざ裏で話していたということは、店の関係者に違いない。
ここで芽衣を連れ帰ったところで、いずれまた彼女をここに来させるのでは意味がない。
なら、ここで話を終わらせた方がマシだ。
「芽衣」
「え……」
「この人、誰。俺に説明できる人?」
芽衣は俺の顔を見上げ、困ったように眉尻を下げる。
が、彼女はきゅっと口唇を噛み締めた。
「……あたしが働いてるお店の、店長なの」
「……へえ」
ヒラの店員じゃないとは、思ったけど。
ますます、目の前で悠然と突っ立っている男を蔑んでしまいたくなる。
風俗で働いている女の子そのものに、偏見はない。
だが、そこで働く男はクズだという認識が俺にはあった。
女の子に性の奉仕をさせて、その上澄みで食っている男というのは、店内の管理をしているとはいえ、ロクデナシで間違いない。
風俗で金を落とす男よりも、そういう男の方が女を食い物にしているんじゃないか──という感覚が、俺の無意識の中にあった。
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