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やけにしおらしく謝罪を口にした操の頬が、少し赤い。
俺を意識してるんだか、いい歳してよその会社で叱られているのが恥ずかしいんだか、正直よく判らない。
どっちにしても俺の感知するところではない。
操の問題だ。
咥えていた煙草のフィルターをぎりりと噛んで、そのまま溜め息が漏れた。
「マリちゃんが変な誤解したらどう責任取ってくれるつもりだったんだ」
「え……」
操の顔に焦りが浮かび、彼女は思わずマリちゃんのデスクを振り返ろうとする。
「馬鹿、じっとしてろ。マリちゃんの話だってバレんだろーが」
「あ、ご、ごめん」
普段はこんな迂闊な女ではないのに、よほど動揺しているのか素の操はまた慌てて俺の顔を見、口唇を噛み締める。
「……何だよ」
「いえ……ごめんなさい……」
明るくて快活で、仕事もできる。操はそういう女だ。
そして、そういう女だからこそ、プライドも高い。
そういうところだけ、俺達はよく似ていたのかも知れなかった。
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