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「で、何聞いて欲しいの」
定食屋の看板娘的な中年のおばさんが出してくれた麦茶に口を付けながら、そう訊いた。
俺が操にかける言葉がそっけないのなんて、今に始まったことじゃない。
操もさして何も気にする様子もなく、溜め息をついた。
「先週から、旦那が帰って来ないの……」
「はあ?」
操の鼻の頭が、一瞬で赤くなる。
けれどさすが腐っても社会人というか何というか、彼女は瞳を少し潤ませただけで、話を続けた。
「ホントはね、まだ甘いことも考えてた。木島はもう一度泣き落としたら何とかなるんじゃないかとか、また違う男の子でも買おうかとか」
「……おい」
さすがに喉の奥がチリチリするような怒りが込み上げてきて、操を睨み付ける。
「しないわよ。木島に怒られて、やっぱりこんなんじゃ駄目だって思ったし……」
「……」
そこは、褒める気がしない。
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