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俺だって人でなしだが、何年もこいつへの想いに耐えてきた。
その間傷付けた女だっているし、褒められたもんじゃない。
だが、人妻をどうこうしてとある家庭の平穏を脅かそうとなんて、しなかった。
まあ、結局やってしまったけど。
詭弁かも知れないが、あれは俗に言う不倫とは少し違うものだったし。
自分を正当化したいわけではないが、そんな俺にだって辛抱してることがあるって話だ。
女なんだから、もう少しくらい貞節を持って生きやがれ、と勝手ながら思うわけだ。
いくら平等だなんだと謳ったところで、そんなのは社会の建前で、まやかしだ。
男と女が同じものであるはずがないんだから。
操は麦茶のグラスを握り締めながら、続ける。
「……今はまだ若い部類に入れてもらえるけど、いつまでもそうじゃないってことに、やっと気付いて……」
「は?」
話がいきなり斜め上に飛んで行って、思わず瞬きを繰り返した。
「だって、あたしもうすぐ30になるのよ。身体で人生渡り切れるわけじゃないし」
「お前、まだ昼間だよ。さっきから何言ってんの?」
「真面目な話よ。
恋とかエッチとか、
そんな頭の悪いこと言ってられる
年齢じゃないのよ、そろそろ」
「……それは……」
大いに賛同したいところだけど。
一応操も声をひそめて話してはいるが、正しいサラリーマンの昼メシ時の話題なのか、これは。
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