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呆れた瞳が、俺を見下ろしている。
「あなた、さっさと帰りなさい」
美智子さんの、営業用でない低い声が俺の頭を踏みつけてくるようだった。それがやたら気持ちいい。
こんな気分になるとき、やっぱり俺は自分をMだと思う。
付き合い出してからというもの、芽衣からの冷たい視線がなくて、つい懐かしくなってしまう。
だからと言ってこれまでのように、ないものねだり的な感じで女を使い分ける気にもなれない。
だからここに来たんだけど、胃と心臓も痛いのはちょっと辛い。
“Nero”の馴染んだ空気に癒されながら、俺は美智子さんの前で薄い水割りをちびちび口にして溜め息をついた。
薄いからまずい。
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