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にわかに拒否の色をその顔に浮かべる。
ほら、また呆れるほど単純な反応。
「自分の女が他の男と寝たっていうのに、殴りもしないでまだ話し合いをしてくれる男なんてそうそういないぞ」
「でも、だって……それは」
「結城さんが浮気するからって? 俺、言ったよな。自分で言えよ、って」
「木島……」
「俺の見たとこ、結城さんの方はお前と別れる気なんてないぞ。だったらこの状況だって、お前のハラひとつだろ」
一瞬泣き止んでいた操の口唇が、わなわなと震える。
いつもなら、他の女なら、俺だってここまで追い詰めようだなんて思わない。
──操だから。とても長い間、俺の唯一の“特別”だった女だから。
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