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言われた通り大人しく目を閉じると、芽衣の持っていた荷物が足下に落ちる気配がして──口唇にむに、とやわらかな感触。
条件反射のように芽衣の背中に腕を回そうとしたとき、逆に両手首を握られ、動かないよう押さえつけられた。
「ん、んっ?」
驚いて目を開けると、そっと芽衣の口唇が離れる。
すぐ間近にある瞳がぐりっと俺を見上げて、冷たく光った。
「──閉じてって、言ったでしょ……」
ささやくような、芽衣にしては低い声。
ああ、気のせいじゃない。
静かに怒っていらっしゃる。
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