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「“あたしのこと判ってくれるのは木島だけだ”とか何とか……」
「……ふうん」
面白くなさそうに相槌を打ち、芽衣はそれきり黙り込む。
芽衣の手はバスローブの胸元と右手首を掴んでいるし、やわらかく潰れた胸から彼女の体重が預けられているのも判る。
目の前にかすかな息遣いを感じるし、芽衣はここにいるってこと、判ってはいるんだが。
さっきまでは全然耳に入らなかった空調の音が静かに響くだけで、他は何も聞こえない。
不安に駆られた、というわけではないが、似たような心細さを感じた。
「芽衣?」
「そうなの?」
「え? 何が」
沈黙の間に、それまで話していたことが意識から飛んでいってしまったらしい。
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