当てられて、中てられて。

30/36

101人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
   さっき、電話で話したとき、確かに芽衣は怒ってなかった。  ここに来るまでに色々思い描いて、だんだん腹が立ってきたのかも知れない。  俺の顔を見た瞬間、何か噴き出したのかも。あるいは、両方か。  なんにせよ、芽衣がそういう感情を持て余していることだけは確かだ。 「あのさ、芽衣」  返事をしてくれない。  何事もなかったように話すのは、いやみたいだ。 「俺が操の一番の理解者であろうとなかろうと、それは些末な問題だと思う」 「どうして」  ムッとした芽衣の声。  目を閉じているせいで、耳から得る情報量が凄まじい。  それでも瞼の裏には、暗闇に紛れてマゼンタの気配がずっとしている。まるで、匂ってくるみたいに。  それに酔いそうになりながら、言葉を選んで続ける。 .
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加