101人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
さっき、電話で話したとき、確かに芽衣は怒ってなかった。
ここに来るまでに色々思い描いて、だんだん腹が立ってきたのかも知れない。
俺の顔を見た瞬間、何か噴き出したのかも。あるいは、両方か。
なんにせよ、芽衣がそういう感情を持て余していることだけは確かだ。
「あのさ、芽衣」
返事をしてくれない。
何事もなかったように話すのは、いやみたいだ。
「俺が操の一番の理解者であろうとなかろうと、それは些末な問題だと思う」
「どうして」
ムッとした芽衣の声。
目を閉じているせいで、耳から得る情報量が凄まじい。
それでも瞼の裏には、暗闇に紛れてマゼンタの気配がずっとしている。まるで、匂ってくるみたいに。
それに酔いそうになりながら、言葉を選んで続ける。
.
最初のコメントを投稿しよう!