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「待って……まって、シロちゃん」
吐息交じりの、実に説得力のない抵抗をしながら、芽衣は口唇を離す。
「待てない」
「だめ、待って!」
じれったさが喉の奥で渦巻いて、思わず眉根を寄せる。
いったん毒気を抜かれた芽衣の瞳が、一気にうるんと揺れた。
可愛いから、どうにかしたいんだけど。
「なんか、判った……シロちゃんの言いたいこと」
「そう? じゃあ」
更に強く抱き寄せようとすると、かぶりを振りながら芽衣が俺を押し返す。
「全然判ってないじゃないか」
「だから、待って、って……」
ふう、と息をつきながら、芽衣はやんわりと俺から離れた。
落としたままだった荷物を拾い上げ、近くの椅子の上に置くと、芽衣は俺の前に戻ってきてしゃがみ込む。
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