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「芽衣?」
「されるがままは……いや」
芽衣は跪いたまま、潤んだ瞳で俺を見上げた。
その煽情的な目力に、下半身から脳みそのど真ん中に、甘いアルコールをぶち込まれたような衝撃が走る。
「ここのところ、ずっと思ってた……シロちゃんのシュミは判ってるつもりだったけど」
「おい、芽衣」
芽衣はおずおずと俺のバスローブの裾を掴み、そっと開いて持ち上げる。
「何する気だよ、そっちこそ、待てって」
「いやよ。前の人とまたごちゃごちゃした、罰……」
低く浮かされたようなささやきを漏らし、芽衣はゆっくりと顔を近付けてくる。
何故か一瞬、どこに逃げよう、と窓の外を見た。
外は、びっしょびしょの大雨だ。
こんな格好で行けるところなんて、どこにもない。
「芽衣!」
「大丈夫……もう“ミサヲ”じゃないよ、あたし」
その一言に、とどめを刺された気がする。
腹の下に、芽衣の吐息とふわふわ揺れるやわらかい髪を感じて──降伏の代わりに、俺はその頭を撫でるしかなかった。
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