101人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
一瞬声を上げてから、結城さんはハッとして俺を振り返る。
「すみません」と頭を下げられても、いえいえーとか和やかな返事をするわけにもいかず、とりあえず首肯で応じた。
「たった一度や二度!? 浮気は浮気よ! それに、回数の問題じゃないでしょ!?」
「そうして俺を責めたいのなら、なぜ自分も同じことをするんだ? 俺は、自分が悪いと思ったからじっと耐えてるんだ!」
「何が耐える、よ! 男だけが耐えてると思ってんの!? この、おたんちん!!」
「おたん……」
思わず結城さんの言葉が止まる。
操の思わぬ語彙に呆気に取られて見ていると、結城さんの握った拳がわなわなと震え出していた。
DVに発展してはいけない、と止める準備だけはしておこうと思ったときだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!