選択肢なんて、あるわけない。

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   女も社会に出られるようになったからって、30年や50年で人間の本能とか習性が変わるとは思えなかった。  余計なことを考えてしまいながら、溜め息が漏れる。  仕事をなるべく早く切り上げてここに来るというマリちゃんの都合を広樹さんと雄星に伝えて、ソファーに腰を下ろした。 「なあ」  雄星がちらっと俺を見る。  同じように視線を返すと、雄星は軽く眉根を寄せた。 「あんた、帰り遅くなって大丈夫なのか」  ……芽衣の心配をしてるのかと思うと、心の端っこが少しちりっと焦げ付く。  嫉妬心なんてもう持っていないつもりだが、そういうのとは違うところで生まれるどうしようもない不愉快はあった。 .
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