序章

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ただ一人だけ。 たった一人だけ、信じてくれた少女がいた。 馬鹿げた妄想のような話を、誰もが気味悪げに遠巻きにした子供を、 嘘の余地が無いほど大真面目な顔で、 一言も漏らさずに聞き入るような真摯さで、 互いに触れることができる距離で、 『しんじるよ』 少女はいつでも、そう言っていた。 屈託の無い笑顔のまま、 いつだって、この手を握ってくれた。 ――言い訳をするならば、 それが何故なのかを考えられるほど、賢しい子供じゃなかった――
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