10人が本棚に入れています
本棚に追加
~忘れ物~
「では、これから展示会の成功をお祝いして、合同二次会をはじめま~す」
望は二次会の居酒屋で、盛り上げ役に徹していた。
「美沙ちゃん……
今度さ、一緒に出掛けようよ。
俺、本気だからさ」
「山崎さん…困ります」
酔いが回った山崎の強引な態度に、美沙が後ずさると鞄にぶつかった。
(……いけない!忘れちゃった)
「あっ……ちょっとごめんなさい」
美沙は慌てて望に駆け寄り、店を出た。
「美沙っ!」
呼び止める声に美沙は振り返った。
「雄ちゃん……」
「どうしたの?
一人で危ないよ」
「あの……前の居酒屋さんに忘れ物しちゃって」
「この辺危ないから俺も一緒に行くよ」
居酒屋に向かうまでの僅かな時間……
二人の間に会話はなかったが、穏やかな空気が流れていた。
(やっぱり……雄ちゃんといると落ち着くな)
最初のコメントを投稿しよう!