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~消えた忘れ物~
「申し訳ございません。
そのような忘れ物は見当たらないようです。」
居酒屋で忘れ物がないか美沙は店員に尋ねていた。
「そうですか……」
「見つかり次第、連絡しますので、よろしければ連絡先と忘れ物の中身等を記入していただけますか?」
店員にうながされ、美沙は用紙に記入をし、店を後にした。
「忘れ物なくて残念だったな……
高価な物だったのか?」
「ううん……洋服なんだけど……」
(望から返してもらったワンピース…
雄ちゃんとの思い出の……)
「きっと、見つかるよ。
二次会戻る?
帰るなら送っていくよ」
「帰ろうかな。
疲れちゃったし……」
美沙は自然と雄一の手を握った。
雄一は微笑んで、美沙の歩幅にあわせ駅に向かった。
「あっ定期入れどこだったかな」
雄一が鞄の中を探すと、封筒がちらりと見えた。
(えっ……なんで?)
「あったあった。
美沙?どうした?」
「ごめんねっ、今日寄らなきゃいけない場所があったの。
またね」
美沙は雄一を置いて改札を通り抜けた。
(あの封筒!
……雄ちゃんが犯人だったんだ)
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