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あふれ出んばかりの華やかな笑顔。
純粋無垢で、誰からも愛されるような屈託のない笑顔。
俺は、それを見るのが好きだった。
――その世界は幸せだった。その世界にいる時だけは、本当に楽しくて仕方がなかった。
いつも俺を連れ出してくれる、白くて柔らかな手は小さくて。
振り回されるように色々なところを駆け回ったり、一緒に悪戯をして大人たちを困らせたり。
毎日が新鮮で、毎日が輝いていて……そしてそんな毎日は、また新たなわくわくで支配されていく。
よく二人で怒られたりもしたけれど、大抵の主犯格はその子で、しかも彼女はまったく悪びれた様子を見せず。
また何かしらの悪だくみをしては、俺を呼びつけて白い歯を見せつけてきた。
「ねぇねぇ、こんなの思いついたんだけど!」
その子は、大人をおちょくる天才だった。
悪戯が成功した時の彼女は、本当に楽しそうに笑う。
周囲の人たちからすれば、彼女以上に手のかかる子供はいなかったであろう。それほどまでに、やんちゃで活発な女の子だった。
当時の俺は苦笑いをしながら、でもそんな彼女の笑顔につられて、いつも一緒に悪い顔をしていたものだ。
今度はどうしてやろうか。次はこんなのがいいんじゃないか。
毎日会えるというわけでもなく、しかもほんの半年程度の付き合いでしかなかったのだけれど。
それでも俺たちは、二人で一つのことを一生懸命に考えて、一生懸命に実行しようとして。
いつまでも一緒に、どこまでも手を繋いで歩いていこうと決めていた。
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