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「あなた最近楽しそうね。」
姉さんがそう言ったのは麻衣子の家へ遊びに行ってから二日たった日の夕飯の時だった。
たまたま親が二人とも外出中で、二人だけで夕飯を食べていたのだ。
「…楽しそうって。」
姉の作ったハンバーグを一口食べる。肉汁とソースが絡み合ってあいかわらずおいしい。そろそろ仕事ばかりの母の腕を越したのではないだろうか。
「いや、朝学校へ行くのもなんだか楽しそうだし、帰って来てからも嬉しそうだし、好きな人でもできたのかと思って。」
「すすす、好きな人なんていないわよ!だって私の学校は女子校なのよ??」
思わず声が裏返った。そうだ。自分の学校は女子校なのだ。好きな人なんてできるわけがないのだ。それなのに、どうして私はこんなにも動揺しているのだろう。
姉さんはにやりと人の悪い笑みを浮かべて眼鏡の奥の私の目をじっと見つめた。
「じゃあお姉ちゃんが麻衣子にいくつか質問しよう。」
「答える義理は…!」
「まあまあ。じゃあいくわよ。」
姉さんは無言の圧力で私を黙らせると、その質問とやらを始めた。
「その人といて楽しい?」
「…ええ。」
「気付くとその人のことを考えてる?」
「ええ。」
「その人と話したり、ちょっとしたことでも一緒に居られたり、褒められたりしたら、嬉しい?」
「ええ。」
「その人のことを考えると胸がどきどきしたり苦しくなったりする?」
姉さんの質問にそっと眉根を寄せる。今まで私は彼女のことを考えた時、胸がどきどきすることはあった。しかし胸が苦しくなったりしたことは無い。でも、胸がどきどきすることはあるので素直に頷いておいた。
「ええ。」
「じゃあ、その子とキスできる?」
「…ええ。」
私の答えを聞くと姉さんはにやりと楽しそうに笑った。自分と似たような顔でいつも自分がしないような顔をされるのは違和感を通り越してちょっと引くのでやめてほしい。
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