1人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、胸の騒がしさの理由も分からないまま私は週末を迎えた。
ここ数日睡眠不足が続いたためか若干頭が痛かったが麻衣子の家に向かう道すがらずっと興奮は治まらず、むしろ挙動不審ではないかというほどに緊張していた。
「今日は私が待っている番だったね。」
麻衣子の家の最寄り駅に着くと、私服姿の麻衣子が待っていた。
白いブラウスに黒のスカートはいかにもお嬢様といったようでとても彼女に似合っていた。それだけでまた心臓が騒がしくなるのだからどうしようもない。私はそっと目を伏せた。
「…その服、似合っているわね。」
「そう?ありがとう。」
麻衣子はまた笑って私を見上げた。
「由布子も似合っているじゃないか。」
ぼぼぼ、と顔が熱くなる。ああ多分赤面してるのだろうなと思う。
「そんなこと、ないわ。」
「ふふ、由布子は照れ屋さんなんだね。」
「べ、別に照れ屋なんかじゃないわ!」
「そういうところが照れ屋さんだって言うんだよ。」
してやったり、という顔で麻衣子が言う。麻衣子がその顔をする時にはもう私は何も反論できやしないのだ。
「じゃあ行こうか。」
麻衣子が私の人より少し大きな手を握る。麻衣子の手は冷たくて少し乾燥していて、柔らかく小さかった。
そんなことを考えてしまったらもういっぱいいっぱいで、麻衣子の家に行く道のりのことはほとんど覚えてない。なにか話したような気もするけど、それどころじゃなかった。
最初のコメントを投稿しよう!