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「黙れ。」
美しい男からの殺意が込められた本気の威圧。
「……っ!」
オルバート伯爵と、オルバート伯爵を責め立てていた奴隷が顔を瞬時に青ざめさせ黙り込んだ。
何をしているんだ、あいつは。
奴隷の言動にアルドアは内心で情けない悲鳴を上げた。
「勝手に話すな、奴隷。次、許可なくその口を開けば首を刎ねる。
…続ける。屋敷内でしか行動を許されておらず、賃金を他で得る手段を持たない奴隷への一日に一度以上の食料の供給は義務付けられている。そしてオルバート伯爵の釈明に正当性はない。よってオルバート伯爵の非であると認める。」
「はい。ありがとうございます。」
やった。
美しい男の機嫌を損ねてしまった不安があるが、兎にも角にもアルドアは小さな勝利の余韻に口元を綻ばせる。
ふと気になり、そろりと頭を下げたまま目だけで伯爵を見ると、伯爵の自分を見る目つきが恐ろしいものになっていた。反射的に体が震えた。
「次。伯爵は性奴隷以外の普通奴隷にも性的行為を強いたか。」
「はい。私が把握しているだけで三人はそのような行為を強いられていました。その内の一人は年端のいかぬ少女でした。」
「そうか。ではオルバート伯爵の釈明を…。」
ダンッ!
オルバート伯爵が自由な足で地面を強く踏みつけて、美しい男の言葉を遮った。
「煩い煩い煩い、この若僧がああ!! はっ、そうだ、そこの汚らしい奴隷の言う通りだ! だがそれがどうした!? 私の奴隷だ! 私の女だ! 私の好きにして何が悪いと言うのだ!!」
オルバート伯爵は美しい男を睨み付ける目を充血させ、そう大声で宣った。 そして、その勢いを殺さないまま激しく息巻いた。
その時、アルドア含む奴隷達は見た。 いや再び目にした、と言うべきか。
「もうこんな茶番は終わりだ! 私を屋敷に帰せ!! 死神がなんだ!? 死神だか知らんが、たかが人間だろうが!! 神などではな……ぃ…。」
突然、激しく言い募っていたオルバート伯爵の言葉に勢いが消えた。
オルバート伯爵は目を虚ろにし、小さく口を開いたまま、先程まで敵意を向けていた美しい男をジッと見つめている。
オルバート伯爵の目線の先。
美しい男の周りをふわりと銀の粉が舞い、優しく守るように包み込んでいた。
その情景は神々しいオーラを放ち、美しい男の美貌をさらに引き立てている。
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