残酷無情の死神

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美しい男は屈み込みアルドアと目線を合わせると、右手をアルドアの目の前に寄せた。 よく見ると、その右手は月光を受けて微かに光る銀の粉を纏っている。 「首の代わりに、主人と同じ物を失え。」 美しい男の右手から放たれた銀の粉が奴隷達を囲むように広がった。 月光を浴び白銀に変化した銀の粉が奴隷達の視界を染め上げる。 「今宵、彼の者達に呪いを付する。媒介するは眼に埋まりし銀の欠片。満月の日、彼の者達は右目の光を奪われる。」 美しい男の言葉に応えるように、銀の粉が白銀に輝きながら禍々しい紫の光の尾を引いて一人漏らさず奴隷達の右目に吸い込まれていった。 アルドアの右の視界が黒に潰れた。急に視界が閉ざされたことで平衡感覚が狂い傾いた体を、慌てて地面に手を突いて支える。 ああ、駄目だ。 美しい男に鋭く射竦められ、右手を翳された時から朦朧としていたアルドアの意識が落ちる。 完全に意識を失う直前、杖を地面に突き立てる音と慈愛を含んだ美しい男の声が聞こえた。 「これにて処刑審議を終了する。だが悪いな、アルドア=サズ。お前の命は王命で処分対象になっている。せめてもの情けだ、死の時を眠りの中で迎えろ。」 神に殺される。 「負の感情を抱くことなく、逝け。」 ああ、甘美。 そのアルドアの言葉は空を切る鋭い音によって永遠に発せられないものとなった。 最初に来たときのようにぐったりと力無く気絶した伯爵を肩に担いだ若い男の隣で、美しい男は先程切り落とした首を両手で持ち上げ眺めていた。 その首は苦しむ奴隷達を自由にしたいと考え屋敷の外に導いた人物。奴隷達の中で一番の年長である統率者、アルドア=サズの首だ。 アルドアの死に顔は首を切り落とされたとは思えない程穏やかだった。その口元には仄かに笑みを浮かべていて、眠っているようにも見える。 美しい男の前には首の無いアルドアの死体と地面に倒れ込んだ奴隷達が転がっている。 アルドアの首を切り落とした直後、崩れ落ちるように伯爵は気を失った。目を斬られたショックと失血が原因のようだ。目には布をキツく巻き付け止血した。アルドアが死ぬのを見て衝撃を受けたのかもしれない。 「うわぁ……凄い…ですね。流石…死神様です。もう貴方が神様で良いん…じゃありません…か?」
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