残酷無情の死神

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その内の頭にバンダナを巻いた男が青年に近づく。 「おかえんなせぇ、頭。」 「おう、仕事だ。死神様の対象以外の奴等を全部片付けろ。そこに倒れてる奴らな。奴隷契約は切れてねぇらしいから何処ぞの奴隷商にでも契約書ごと投げ込んどけ。」 「へぇ。おい、やるぞ。」 青年の指示を受けバンダナの男が後ろに向かって言うと、そこで待機していた者達が一斉に散らばった。 誰もが皆無駄のない動きで奴隷達を扉の中に運んでいく。 その様子を見て、よしと頷いた青年が腰に手を当て切羽詰まった表情で美しい男に詰め寄った。 その勢いに美しい男の上体が僅かに後ろへ反り返る。しかし青年はその反応を全く気にせず、それどころか追うように美しい男に顔を接近させる。 「これで良いんですよね? 死神様。俺、飯食っても良いんですよね? 食わせてくれるんですよね!?」 「ああ。後は飛び散った血の処理だけだ、頼む。」 「それで最後ですね了解! おいテル、やれ。」 「へぇ、頭。」 青年にテルと呼ばれたバンダナの男が返事を返す。そして血溜まりの中に倒れ込む首の無いアルドアの体を服が血に汚れるのも気にせずに抱え上げた。その後に髪を耳下で切り揃えた女性が血溜まりだけになった場所に立つ。 色気漂う妖しい美女だ。触れたら火傷を負うという表現が実に似合う魅惑の容姿をしている。 その美女の手には小指程度の大きさの透明な石が握られていた。 美女が透明な石を持ったまま掌を下に向けて小さく呟く。 「吸え。」 美女が手を開いた。 落ちる透明な石。 石が地面に触れた、その時。 宙に浮かび上がった血の筋が辺りを彩った。 瞬く間に、地面に流れた血と壁に散った血が透明な石に吸い込まれていく。 透明な石へ空中を流れる水のように吸い込まれた血は、透明だった石を赤く染め上げた。 「ふふ…!」 それを見た美女は嬉しそうに笑い、ひらひらと青年に手を振った。 「じゃあ、お頭ぁ。あたしもう行きますねぇ。ふふ、あらぁ大きくなったねぇ。あ、死神様もさよぅならぁ。」 「失礼させて頂きやす。この首無し遺体は俺が処理しときやすんで。」 小指から人差し指程に大きくなった石を拾い上げ、美女とバンダナの男は同じタイミングで青年達に一礼し、扉の中へ戻って行った。
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