王級最高依頼

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『貴方の与えた任務はオルバート伯爵の正妻サニールの暗殺と伯爵の犯行に荷担した使用人達十数名の取り押さえ。 ですがオルバート伯爵とその他十数名を捕らえている間に、サニールが不倫相手と手と手を取り合って逃亡したのだそうです。なんでも二人には傭兵の協力者がいたらしくて、捕獲を邪魔されたらしいわ。』 ムツキとムツキに付き従う者達は皆かなりの実力者だ。つまりそれだけ戦闘経験のある傭兵だったという訳か。 不倫相手のことよりもそれに雇われた高い能力を持つ傭兵に興味が向いた。 もし金で買える傭兵なら欲しい。無駄なことはせず、言わず、課せられた任務を黙って完璧に遂行できる人間だったら尚のこと良い。 『………。』 『聞きなさいね、シュゼク。』 母は薄笑いを浮かべながら、深く考え込み黙った私を低い声で咎めた。その声は酷く冷たい。少々怒らせてしまったようだ。 母も裏の一族の一人、本気で怒らせては厄介なことになる。 顔を上げ母に意識を戻す。 『逃げた先は、実戦経験のある腕の立つ者を高賃金で釣って、使用人として雇っていることで有名な軍人崩れの貴族もとい不倫相手の御屋敷です。』 『奴ですか。』 その貴族のことは知っていた。虎の威を借る鼠のように後ろ盾だけは立派で本人の実力は至極矮小な男。有力貴族の親の計らいか、何をするにも優秀な者が男の周りにいた。軍を抜けた後も優秀な者で自身の周りを固めていたと記憶している。私にとっては少しの価値もない男だ。 もう母が何を言いたいのか全て分かった。 母が静かに私の目を見つめる。私も母の目を見つめ返した。 それに満足したのか母が薄笑いを消し、柔らかに微笑んだ。 『そうです。ここまで言えばお分かりですね? 人海戦術を使えば話は別ですが、密やかに使用人達を全員無力化してサニールを暗殺するのは至難の業。そうなると、隠密能力の高い者の協力が必要となります。少人数で肉体派のムツキ達にそれは期待できません。 そして屋敷の者達に気取られず、屋敷内の何処かにいるサニールを見つけ出し暗殺する事ができるのは貴方と今久しぶりの食事に夢中になっているユズしかいません。ですが彼の至福の時を邪魔するわけにもいきません。』 そこで母は言葉を切り、ルリーの背を一撫でした。 愛情の籠もった優しい手つきでルリーを撫でる母は、その愛情を声にも籠めて私に言った。
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