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荒廃した街。 これがあの東京――渋谷だなんて信じられなかった。 灰色の雲が青い空を奪って久しい。 こんなにも厚くては太陽も届かない。 吹き付ける風は何故か生暖かく、12月の筈なのにまるで春の訪れを仄めかしていた。 『…ら……した……設楽明良(したらあきら)……』 インカムから途切れ途切れに鼓膜を叩く音声に思わず顔をしかめる。 奴に見えていないのがせめてもの救いだ。 「何だ?ナイト?」 『だーかーらー、オレは内野尚登(うちのなおと)!ナイトじゃないっての!』 子供みたいに頬をぷっくりと膨らませている姿が浮かぶ――まぁ実際に【子供】なのだが。 内野尚登は10歳、愛称の【ナイト】は【騎士】とも【夜】とも【彼の名前の最初と最後からもじった】とも噂されていたが、真相は定かではない。 『聞いてる?設楽?』 「おい……俺はお前より30上の人生の大先輩なんだぞ。ちっとは敬え」 暫しの沈黙。 『はーい、すみませんでしたー、オ・ジ・サ・マ』 コイツ、後で殴る。 それから説教三時間!
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