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「現状を報告しろ」
簡潔に伝えれば、ナイトも気を引き締めたのか声音がぴりりとする。
こんな子供に後方支援を任せるなんて、酷だぜ……御上さんよ……!
行き場のない苛立ちを噛み締め、俺は仁王立ちのまま次の指示を待つ。
『オッケー、設楽。ターゲットは渋谷に建設中だった【ラッキースター】内に信者共々いる可能性が高い』
ナイトが『高い』と言う時は『確実』という風に捉えて構わない。
彼はIQ250、情報収集能力に突出した所謂【天才少年】なのだから。
設楽さんと呼べ、と言いかけて止める。
国外から戻ったばかりの俺からしてみれば、ナイトはこの日本では大先輩に当たるとも思えたからだ。
『え?何?』
「いいから転送しろ」
『ほーい』
調子に乗っているのか?
しかし本当は少年が極度に緊張しているのはわかっていた。
それを誤魔化したくて……認めたくなくて軽口を叩いているのだ。
あの巨大な施設に一人、俺をサポートする為に独り。
思うだけで心がずしり、と沈んだ。
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