第3話

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「…………」 「そんな顔するなって、別に言ったりしないから」 初見さんは俺の後ろ側にいる先輩に視線を向けながら首を軽く傾げた。 「そういう煩わしさは一応分かってるつもりだから」 「…………」 「あいつ、いい奴だよ」 初見さんは小さな声でそう言った。 「……」 そして電話を終えた先輩を半ば強引に引きずって行く。 振り向いた先輩は「30分で戻る」と言い謝る仕草を見せた。 そんな2人の後ろ姿を見て先程のやり取りを思い出す。 時期社長候補に向かってあの口調って……さすがって感じ。 こぼれ出そうになった笑いを片手で押さえ、踵を返した。 「あ、木崎どこいった?」 「今初見さんに捕まってます」 「初見さん……」 その名前を聞いただけでざわっとする。 まぁ、そうですよね。 そうなりますよね。 「何かありましたか?自分で対応できる事ならやります」 親元さんは一度視線を伏せてからメモを差し出した。 一瞬考えた事が窺える。 「多分羽山で大丈夫だと思うから折り返しして貰っていい?」 「はい」 親元さんは用心深くて、人の事を良く観察していると思う。
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